まず、インスペクション(inspection)とは、英語で精査、点検、検査等を意味する単語です。
住宅用語でいう「インスペクション」は住宅診断建物調査を指し、「ホームインスペクション」とも称されます。
「ホームインスペクション」は、住宅に施す検査全般を指し、検査の内容や提供元によって様々な名称で提供されています。居住中の住宅の耐震診断や、維持管理時の定期点検等を目的としたもの、リフォーム前後の現場把握についての調査もすべて「ホームインスペクション」です。
平成30年の宅建法改正により、中古住宅市場活性化の肝入りとして注目されている「既存住宅状況調査(建物状況調査)」もこの一種で、現在、住宅用語で「インスペクション」といえば、この「既存住宅状況調査」を指すものがほとんどです。アオキ一級建築士事務所のインスペクションも、この宅地建物取引業法が規定する「建物状況調査」に対応しております。
「建物状況調査」は、「既存住宅状況調査技術者」の資格を持つ建築士である、住宅診断士(ホームインスペクター)が、第三者的な視点で、また専門家の見地から、住宅の劣化状況、欠陥の有無などを診断し、客観的なアドバイスを行います。
診断は、目視による非破壊診断が基本で、屋根・外壁・室内・小屋裏・床下など、2時間程度の現況調査を行います。また、弊社では、機材を使用する詳細診断にも対応しています。診断後1~2週間程度で診断報告書を作成いたします。
アオキ一級建築士事務所は、株式会社アオキ建築という工務店を兼ねていることもあり、居住している住宅のインスペクションをご依頼いただくことが多いです。
一つ目は、老朽化が進んだ住宅の将来的な耐久性が気になるけれど、どのようにすることが自分たちのライフスタイルに合っているのかという判断がご自身では難しいとき、その判断材料として、建物の現在の状態の把握をしたいというご要望。
二つ目は、安心して暮らせるすまいを長く保つための定期的なインスペクションです。欠陥を早期に発見するすることで、被害が少ないうちに修理を行うことができるため、結果的にメンテナンス費用を抑えることができます。
また、中古住宅売買においては、契約後の欠陥発覚や不具合メンテナンスの想定外の出費等のトラブルを事前に回避することができ、買主・売主双方が安心して取り引きを行うことができます。
その他にも不動産仲介業者が物件の状況を消費者に明らかにするために利用するケースや、建てたばかりの新築住宅や見た目がきれいな中古住宅の購入を考えたときには、購入前にインスペクションなどで住みにくさや劣化を調べておくことも大切です。
このようにインスペクションの目的は様々ですが、安心・安全な家とインスペクションは深く関わっているのです。
概要・目的
「既存住宅状況調査(建物状況調査)」とは、対象となる住宅について、基礎、外壁等の住宅の部位毎に生じている劣化事象等の状況を、目視・計測を中心とした非破壊検査により把握し、その調査結果を依頼主に対し報告するまでの流れを指し、これにより、既存住宅等の「調査による安心」と「保険による安心」を提供することを目的としています。
「調査による安心」
調査部位ごとに行った「劣化事象の有無」の調査結果は「建物状況調査の結果の概要(報告書)」としてまとめられます。これは、「不動産の売買契約」に先立って行なわれる「重要事項説明」時の資料としても使用されます。既存住宅状況調査は「既存住宅」の購入やリフォーム等を希望される方に、建物の現状を正確に伝え、購入の是非を判断するための情報を提供する役割を担っています。
「保険による安心」
調査範囲に「劣化事象」が無く、且つ「耐震性を証明する書類」を有するとされた「既存住宅」については「既存住宅状況調査(建物状況調査)」と「瑕疵保険適合検査」の調査項目が同等のものとなっていることから「既存住宅瑕疵保険」の引受が可能(保険引受の判断は瑕疵担保責任保険法人による)となります。
※既存住宅状況調査(建物状況調査)は、対象住宅に生じている劣化事象等の有無を確認することを目的としているため、その住宅の現行の建築基準法関係法令への適合性の確認や、耐震性や省エネ性能等の住宅の性能の程度を判断すること、住宅の構造耐力上主要な部分等への隠れた瑕疵の有無の判定や瑕疵がないことを保証する事は目的としていません。
既存住宅状況調査(建物状況調査)で実施しないこと
・劣化事象等が建物の構造的な欠陥によるものか否か、欠陥とした場合の要因が何かといった瑕疵の有無を判定すること
・耐震性や省エネ性等の住宅に係る個別の性能項目について当該住宅が保有する性能の程度を判定すること
・現行の建築基準関係規定への違反の有無を判定すること
調査対象・・・「新築」住宅を除く、全ての既存住宅
※「既存住宅瑕疵保険」の引受の可否を判断するため、「耐震性に関する書類」の有無の確認も行います。
※「店舗」や「事務所」などの非居住建物は調査対象から除かれますが、「店舗併用住宅」や「事務所併用住宅」などの居住部分を有する建物は調査対象となります。
※この調査対象は、「既存住宅状況調査(建物状況調査)」としての対象であり、アオキ一級建築士事務所では「新築」や「非居住建物」のインスペクションも取り扱っております。
調査対象の範囲
調査範囲は「一戸建て」と「共同住宅等」で異なり、「共同住宅等」においては、さらに「住戸型調査」と「住棟型調査」に区分が分かれます。
また、劣化事象の判断基準は「木造」、「鉄骨造」、「鉄筋コンクリート造」によって異なります。
調査員の資格
既存住宅状況調査技術者であることが必要です。
なお、「既存住宅状況調査」は建築士法の定める「建築物に対する調査又は鑑定業務」となっており「建築士事務所登録」のない既存住宅状況調査技術者は、改正宅地建物取引業法に定める「建物状況調査(既存住宅状況調査)」を行なうことはできません。
※リフォーム工事前などに行なう住宅のインスペクションを「既存住宅状況調査技術者」と称して行なうことは問題ありません。
◆調査方法
現場での足場等を組むことなく、少なくとも歩行その他の通常の手段により移動できる範囲や、移動が困難な家具等により隠蔽されている対象部分を除く部分で行います。木造住宅の接合部の仕様については、可能な限り調査します。
※移動が困難な家具については、ご依頼時に確認させていただきます。
調査箇所
調査箇所は主に「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する」部分です。
調査部位ごとに「劣化事象」が無いかどうかの調査を行ないます。
「瑕疵保険適合検査」との違い
瑕疵保険適合検査は、その名の通り瑕疵保険に入るための検査となります。検査項目については、「既存住宅状況調査」と同等のものとなっているため、「既存住宅状況調査」を受けることで「既存住宅瑕疵保険」の引受も可能(保険引受の判断は瑕疵担保責任保険法人による)となります。
瑕疵保険適合検査会社・検査員の条件
検査会社:瑕疵保除法人に登録している検查会社
検査員:既存住宅状況調査技術者(建築士)または、既存住宅現況検査技術者*+保険法人
※既存住宅インスペクションガイドラインに基づいて実施した「既存住宅状況調査技術者講習」の修了者が行う検査であれば、保険法人の現場検査を省略できます。
既存住宅状況調査技術者と既存住宅現況検査技術者の違い
「既存住宅状況調査技術者」と「既存住宅現況検査技術者」という資格は、言葉も内容も似ていますが、全く位置づけが違います。
言葉の違いを比べると前者は「状況調査」であり、後者は、「現況検査」です。
これまでの制度としてあったのは、「現況検査」の方で、それがこれまでの「インスペクター」でした。
それが、国土交通省の告示によって、新たに「既存住宅状況調査技術者講習制度」が設立され、「既存住宅状況調査技術者」となるために、建築士が既存住宅状況調査技術者講習を受講し、修了考査に合格することが必要となりました。
現在の「インスペクター」という資格制度は、この「既存住宅状況調査技術者講習制度」に順次移行していますので、「建物状況調査」等は従来のインスペクター(既存住宅現況検査技術者)では行えません。